ＴＯＰＩＣＳ
支部コラム〜復興進まぬ被災地石巻を訪ねて／石山浩一【2013/11/11】
当支部会員による「支部コラム」への投稿記事をご案内するコーナーです。社会保険労務士の活動と思いを感じて頂ければ、と思います。
【復興進まぬ被災地石巻を訪ねて】社会保険労務士会江東支部 石山 浩一
＜宮古市でのボランティア活動＞
１１年３月１１日の東日本大震災によって甚大な被害を受けた東北には私の故郷山形があります。幸い山形は直接の被害はありませんでしたが、被災地は身近な存在であり何かで出来ることはないかと考えていました。そんな折、私が関係している産別組織が、被災地でのボランティア活動を行っていることから、震災３カ月後の６月６日から１週間、岩手県宮古市で泥出し等の活動を行いました。５メートル以上もある防潮堤を乗越えた津波に、生活を奪われてしまった街の人々の大変さをボランティア活動を通じ肌で感じたのです。ある日、活動中にボランティアセンターの担当者に、避難所で年金などの相談があれば連絡を下さいと伝えましたが、後日電話があってそうした要望はないとの返事でした。慣れない避難所生活で、年金などを考える余裕がなかったのかも知れません。
＜石巻労働基準監督署での活動＞
しかし、社労士として手伝うことがあるはずと、東京会の学院運営委員会等で話をしていました。東京会としても被災地の視察など行い支援を考えているところへ、宮城会から石巻労働基準監督署への応援要請があったのです。７月下旬のことでしたが、私の意向確認があり，８月７日から１週間応援に行ってきました。
業務は「未払い賃金コンサルタント」ということで、震災で倒産したため賃金や退職金が支払われない人に、「賃確法」を適用するということです。そのために、ハローワークに求職の申し込みに来た人へ「賃確法」の主旨の手紙を出すことや、停電のため電話が通じない建物が壊れた事業所を訪ねて、状況の把握を行うことでした。にわか勉強のコンサルタントでしたが、一緒に仕事をした山形会の社労士から５〜６件申請があったとのメールがあり、さらに増えてくれることを期待したのでした。
＜被災当時と変わらぬ石巻＞
石巻市の人口は約１５万人ですが、震災での死者と行方不明者が約５，７００人で宮城県全体の１／３、全壊家屋が２８，０００棟で宮城県全体の１／２の被害を受けました。労働基準監督署は石巻港を一望できる日和山公園の近くにあり、何度か公園から石巻港を眺めました。被災前は住宅が港近くまで建っていて、大きな建物は日赤病院と門脇小学校が主だったようです。しかし、応援のとき眺めた光景は、震災時に患者をヘリコプターで運ぶ様子が放映された日赤病院と焼けた門脇小学校が左右にあり、周囲には津波で倒壊した家とほぼ全壊状態の家が延々と続いていたのです。その光景をみながら、自分の家がこうなったらどうしただろうか、ということと早く復旧・復興して欲しいという願いのみでした。
＜被災地を他山の石に心の準備を＞
同時に２〜３年後、復旧した石巻を見てみたいとの思いがあり、今年の５月１１日と１２日に石巻市を中心に牡鹿半島を回り、女川町の復旧・復興状況を見てきました。しかし、日和山公園からの光景は見渡す限りの更地で、港までに見える建物は当時の日赤病院と焼けてコンクリートがはがれた門脇小学校だけです。震災直後に見た時は、壊れた住宅が残されていて災害の大きさを感じたが、２年経った今回は空間の広さにただ空しさを感じるだけでした。牡鹿半島もほぼ同様でしたが、女川町は津波で更地になった海岸近くの土地を、近くの山を切り崩して７〜８メートルかさ上げする工事が始まっていました。完成時期を聞くのを忘れましたが、初めて建設の槌音を聞き復旧・復興の現場を見ることが出来ました。私が訪ねた１時間前、安倍総理が女川町を視察したことを翌日の新聞で知りました。安倍総理がどのような指示したかは分かりませんが、１日も早い復旧・復興を願い、改めて復旧・復興した石巻市周辺を見たいと思っています。
プロ野球の日本選手権で、東北楽天が巨人を4勝3敗の接戦で勝利して日本一に輝きました。震災直後に当時の嶋キャプテンが「被災地の皆さんを勇気づけられるように頑張る」と言う主旨の発言をしていました。その約束を果たすことができたのは、被災地で苦しむ人々に勇気を与えたいという目標を持って戦った成果だったように思います。東北楽天の地元宮城県のみならず、被災地全体に「雀の涙」以上の勇気を与えたことでしょう。
海抜ゼロ地帯が多い江東区です。被災地を訪れて、被災者の声を聞いて戴くことが支援にも繋がります。同時に津波被害の恐ろしさを見て戴き、何時起こるか分からない震災に備えて戴きたいと思っています。
